アンパンマンのマーチ

そうだ 嬉しいんだ 生きる喜び
たとえ胸の傷が痛んでも

何が君の幸せ?
何をして喜ぶ?
わからないまま終わる
そんなのはいやだ!

忘れないで夢を
こぼさないで涙
だから君はとぶんだ どこまでも


れんちゃんが1歳のおたんじょうびをむかえて、すこしたったころ、
クリスマスにもらった童謡絵本にはいっていたアンパンマンのマーチをれんちゃんといっしょに聞きながら、
ママはこの歌の歌詞にはっとしたのを覚えています。

「なにが君の幸せ?なにをして喜ぶ?
わからないまま終わる そんなのはいやだ‼︎」

ママはこの言葉を何度もくりかえしてよみながら、心の中で大きくうなずきました。
そして、隣のあなたを見ながら、
「この子の幸せ、この子の喜びをひとつでも多く見つけるんだ」
そう誓いました。

その頃のママは、病院の先生から少し厳しいことを言われ、
もちろんショックな気持ちと、でもモヤモヤしていたことがやっとはっきりして逆にすっきりした気持ちと、これからの不安と、でもやってやる!という意気込みと、いろんな気持ちを抱えている頃でした。
そして、新しいおうちに引っ越して、親子教室という療育の場をようやく見つけて、右も左もわからないけれど、とにかくあなたのために何かやらなきゃと、気持ちばかりが焦る日々だった気がします。

そんな時にふと目にとまった
アンパンマンの歌詞。
なんにもわからない、なんにもわかってやれない、そんな子育てかもしれないけど、
あなたの幸せ、あなたの喜びだけはわかりたい!
それすらもわからない母親なんていやだ!
だから、それをひとつでもわかってやれるように、それを目標に、私はがんばろう。
そう、教えられた気がしました。
大げさかもしれないけれど、
あの瞬間に、本当の意味で私の子育てが始まった気がします。


れんちゃん
あなたはその数年後、すっかりアンパンマンが大好きなお兄ちゃんになったね。
アンパンマンのマーチが流れて、手をたたいて喜ぶあなたを見ながら、
ママはあの日のことを、あの日の気持ちを、よく思い出していました。
そして、あの日のあの子は、こんなにも大きくなって、こんなにも喜びを表現している!
しかもそれが、あの日のアンパンマンだなんて!
そんな風に不思議に縁を感じていました。


今、れんちゃんはどこにいますか?
それを想像するとき、ママはいつも空を飛ぶあなたがうかびます。
大好きなアンパンマンのように、
どこまでもとんでいるんじゃないかなって。

ママはあなたの幸せ、あなたの喜び、わかってあげられてたのかな?
わからないまま…ではなかったよね?
あなたが喜ぶこと、大好きなこと、いっぱい見つけられたつもりでした。
これからももっともっと見つけるつもりでした。

もう見つけることが叶わないなら、
せめて今まで見つけたことはひとつ残らず覚えていたい。
そう思って、あなたがいなくなってから
、あなたの好きだったことを書き留めています。
れんちゃんがこの世界で見つけた幸せ、ママはずっとずっと忘れずに、大切にするからね。